Nutube preamp pedal
(旧ブログからの掲載記事)
真空管といえば12AX7とかEL84とか6L6GCが有名ですが、
Nutubeという真空管をご存知ですか?
Nutubeを搭載したTUBE SCREAMER(NTS)も発表されているので、
今後の盛り上がりに期待しちゃいます。
ということで、少し前にNutubeを使ったプリアンプペダルを製作したので備忘録もかねて紹介します。
Nutubeの特徴
Nutubeを採用する一番のメリットは、エフェクターで一般的に使用される程度の電圧で駆動できること。それでいて簡単に真空管サウンドが出力できることではないでしょうか。
従来の真空管である12AX7を使用したプリアンプも製作したことがあるのですが、200V程度の電源電圧を扱うことや、ノイズ処理が大変であるため、なかなかハードルが高く感じました。
それに比べるとNutubeはかなり取り扱いが簡単です。
しかし、どうしても難しい一面もあります。
それはマイクロフォニックです。
外部から振動や衝撃が加わるとキーンという高音が鳴ります。本当にわずかな衝撃でも鳴ります。これがものすごくやっかいです。
防振ゴム等である程度の対策は可能ですが、フットスイッチを押すと間違いなく鳴ります。前述のNTSはそのあたりどう処置しているんでしょうかね。
回路の設計
設計した回路図は以下の通り。回路図はkicadで作成しています。
設計と言いつつも、Nutubeサイト内の作例2をベースにしています。
増幅は全てNutubeで行なっているので、純粋なチューブサウンドが出るはずです。
電源電圧と負荷抵抗
電源は9Vを昇圧して30Vにしています。 回路図内の下半分が昇圧回路になります。
負荷抵抗(R4,R11,R15,R21)には1MΩを採用しています。
それを踏まえた上でロードラインを引いてみるとこうなります。
赤のラインが負荷抵抗1MΩの場合で、青のラインがメーカ推奨の330kΩの場合。
バイアス電圧が2.0Vとすると、増幅率は
負荷抵抗1MΩ・・・ (13.8 - 4.0) / (2.5 - 1.5) = 9.8
負荷抵抗330kΩ・・・ (19.6 - 11.3) /(2.5 - 1.5) = 8.3
ということで増幅率を大きくするために、負荷抵抗はメーカ推奨値ではなく1MΩを採用してみました。
バッファの設置
負荷抵抗を大きくするとそれだけ真空管の出力インピーダンスが大きくなってしまいます。出力インピーダンスは、負荷抵抗1MΩとNutubeの内部抵抗250kΩの合成抵抗(並列接続)と等しくなるので、つまり約200kΩとなります。
ハイ出しロー受けというインピーダンスの基本に従うならば、次段の入力インピーダンスは200kΩ以上とすべきです。
しかしそうもいかないのがNutubeの辛いところ。
ここで次段の入力インピーダンスはグリッドバイアス抵抗の値で決まりますが、使用ガイドにはこのように記載されています。
正バイアスで使用するため、最大で30μA程度のグリッド電流流れる。グリッドバイアス抵抗はあまり大きな値にしない。
このグリット電流がグリッドバイアス抵抗に流れるとバイアス電圧が変動するため、あまり大きな値にできないということでしょうか。
グリッドバイアス抵抗と並列にコンデンサを接続すればバイアス電圧の変動が抑えられると思うのですが、それ以上にハイカットフィルタとしての作用が大きくなりそうなので諦めました。
ということで、グリッドバイアス抵抗(R5,R14,R20)はメーカ推奨の33kΩとし、インピーダンスの整合を取るためにJ-FET(2SK2880)でバッファを設けております。
組み込み
基本的にパーツは以下を使用しています。
コンデンサ・・・WIMAのMKS2(電解コンデンサはNichiconのFW)
抵抗・・・タクマン電子のREX
ケース・・・HAMMOND 1950S
ケースは大きさに余裕のあるものを選んだ方が良いです。あまりギチギチにしてしまうと外部の振動がNutubeに伝わりやすくなりマイクロフォニックが出やすくなりますので。
ということで、完成形がこちら。
出音はさすがに真空管という感じです。メインの歪みとして使っていますが、なかなかいい感じです。軽めのディストーションくらいの歪みまでは出ますが、特にクランチあたりのセッティングがたまりません。ピッキングニュアンスで歪みのコントロールもできます。
ただし、マイクロフォニックだけはどうにもなりません。スイッチャーのループに入れてしまえば問題ないですが、単体で使おうとするものならばフットスイッチのオンオフで盛大にマイクロフォニックが鳴ります。
今後、各ペダルメーカーがNutubeを搭載したエフェクターを開発していくことになるのでしょうが、このあたりの課題をどう克服するか期待したいです。